Running Music Box Vol.5 – Through The Gate Of Another…

今回は、Running Music Box Vol.1 - Psychedelic Runningに続く、サイケデリック特集にしたいと思いますが、直球のサイケデリックは1つだけですかね。まあ、ひねりが効いているということで。ジャンルはバラバラですが、自信を持っておすすめできるバリエーションで、今回も突っ走ります!!

DJ 光光光 – Planetary Natural LoveGas Webbin’199999

BoredomsのEYヨが1999年にリリースした究極の何でもありの無限大トランスミュージックの極地。ジャンルはもはや、垣根なし。ガバ、ドラムンベース、ハウス、キワモノのディスコダブ、45回転にピッチアップされたサンバ・デジャ・ネイロ。エフェクトはこれでもか、というほど過剰に加えられ、つなぎもテンポ合わせがなんぼのもんじゃい!!という潔さですが、その分、次に何が出てくるかわからない恐ろしいミックスです。アルバムの解説は旧ブログのこの記事を参考にしてください。

Planetary Natural LoveGas Webbin’199999 / Array / CD ( Music )

日本クラウン( 1999-11-21 )

定価:¥ 2,520 ( 中古価格 ¥ 1,200 より )


さて、このミックスは強烈すぎます。あまりにも刺激が強すぎるので、パワーが弱っているときには絶対に聴いてはいけません。当然、この音楽に合わせて、スローに走って流そうなんて考えても無理!!です。スピードランニングあるのみです。特に前半は。とにかく、頭を真っ白にして、音楽に身を委ねて、この滅茶苦茶なビートで、やっぱり脳みそがグチャグチャになって、それでも、走っている。そういう快楽を生み出すための音楽だと思います。したがって、秩序よく、ペースを保って冷静に走りたい人には向きません!!そういう人はこのCDはさっさと飛ばして、次の項目に移りましょう。

謎のハンドクラップと足音で構成された女性ボーカルものから、一転してムードを変えて四つ打ちに変えたり、YMOの使い方も素晴らしい。Liquid Skyのジャングルのところなんて涙が出てきます。45回転の高速回転のビートなんて頭打ち付けて死にそうになります。

後半は、今で言うところのDisco Dub的な流れになってきますが、リラックスは一切できません。あまりにもぶっとびすぎて。オルゴールが鳴るフィナーレなんてもう頭がどっかに行って、もうどこにももどってこれないかも。。

つー、わけで、これは正統派にアシッドですね。俺は、これをアシッドの正統と認定します

Kentaro Iwaki A.K.A. Dub Archanoid Trim – Izanai

さあ、本当に純粋に気持ちよく異次元の扉を開けたいのなら、このアルバムですよ!!!岩城ケンタロウの超やばいノンジャンルのミックス。全編、なんとも不思議な位相のエフェクターが使われており、綺麗に音が聞こえているには、どこか音が遠い、夢幻のような心地のCD。鳥の鳴き声などの自然音が混ざり合い、果実を口にふくむような快楽に満たされたCD

izanai / kentaro iwaki a.k.a. dub archanoid trim / CD ( Music )

mule musiq( 2005-09-24 )

定価:¥ 2,730 ( 中古価格 ¥ 777 より )


お客さんの話し声もディレイがバンバンかかっていますが、これはミックスの内容と別に録音されたものを重ねているのでしょう。そのようなエフェクトの使い方のさじ加減も素晴らしく、まさに「誘い」というアルバムの意義のとおり、異次元の扉を開く名ミックスです。スピードランニングには向きません。ゆっくり走りましょう。固いこと考えずに。民族音楽からハウスに展開するところも素晴らしく、Idjutの曲で、昇天!!!とにかく、彼は「わびさび」を知り尽くしていると思います。それゆえに、このCDは重たい足を足取り軽く、気兼ねなしに、前に進んでいく一助になるのです

でも、このアルバムは最後70分まで聴いて意義があるのですよ。ぜひ、ロングランで聴いてみてください。なぜなら、Mice Paradeの超名曲「All Roads Lead To Salzburg」が最後に収録されているから。ダンスミュージックではないですが、ちゃんと4つ打ちセンスで対応できる癖に、ダブルドラムとミニマルな音響で奏でられる流麗なギターなサウンドといい。そして、このアルバムに満たされたエフェクト加工といい。Mice Paradeのアルバムでもこの曲は聴けますが、この素晴らしさはこのCDで無ければ聴くことはできません!!最後の観客の会話に溶けてしまうエンディングもすごすぎる。ギターがアルペジオを奏でた瞬間、両手を挙げること請け合いです。

Godspeed You! Black Emperor – Slow Riot for New Zero Kanada

カナダの政治的なメッセージ性の強い音楽を奏でる、轟音アンサンブルのEP。アルバムの説明はこちらを参考にしてください

Slow Riot for New Zero Kanada / Godspeed You Black Emperor / CD ( Music )

Kranky( 1999-04-06 )

定価:¥ 1,084 ( 中古価格 ¥ 1,979 より )


彼らにはいわゆるドラッギーな快楽というのは、ほとんどありません。あくまで真面目なアンサンブルによって静かなところから頂点を迎えるエクスタシー、というのが、ランニングにある種の忍耐と快楽をもたらすのではないかと思います。EPサイズで27分という尺であることから、短い時間でも使いやすく、ランニングの速度を問わないところもいいですね。まあ、基本6/8拍子ですけど、ちゃんとランニングできますよ。途中、ノンビートになっちゃうし、政治的な語りが入ってきてしまったりするんですけれど、そういうところで素に戻って、自分の息遣いとかを意識したりするのも良いものです。なんか、そういうところも含めてこのアルバムの意義があるというか。ランニングにおいては。

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それから、静かに一つ一つ楽器が加わっていき、ぐわーっとアンサンブルのどうしようもぶつけようのない怒りをエネルギーに変換していくのです。これは、真面目にやったら、とてつもない快楽をもたらしてしまった、という典型だと思います。俺のようなヨレタ人間が聴いても、もちろんOK。でも、このシリアスさとアシッドランニングは実に絶妙だと思っています

– TNT

言わずと知れたポストロックならこのバンド、そしてアルバムならコレ、という教科書的にあまりにも当たり前すぎる一枚。

TNT / / CD ( Music )

Thrill Jockey( 1998-03-10 )

定価: ( 中古価格 ¥ 1,299 より )


内容は当然ゆったり目なので、そういうランニングにはまるでしょう。 あまりビートを強調しない箇所が多いですからね。1曲目の「TNT」のあまりも有名な名フレーズからして、足取りが軽くなる感じがします。次の曲だと、シリアスな非常に音響的な楽曲になりますが、そういうところもトンネルをくぐっているような感覚があって、飽きさせません。独特のナイーヴさがアルバム全体にみなぎっていて、でも、それがランニングという行為にはまってしまう

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個人的にイチオシな曲なのは「The Equator」。

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このチープなリズムボックスの上に奏でられる荘厳な宇宙。シラフでも風にさらわれてしまうかのような錯覚に陥る、あまりにも出来すぎな落とし穴。

とにかく、走ることに焦らなければ、捨て曲がないアルバムです。移り変わる風景も味方にしましょう。出来れば、日本版の入手をおすすめします。竹村ノブカズのRemixも素晴らしいですから。

最後に

私は一貫して、ランニングに対してトランスを要求しており、トリップを要求しており、同時に、日々の(といいつつ走らない日の方が多いくらいだが)鍛錬としての地道な足取りを求めています。サイケデリックと言う言葉ひとつにしても、もはやLSD(強調しておくが、Long Slow Distanceの意味ではない)によるトリップを念頭においた60年代の感覚は彼岸の彼方に遠のいてしまいました。ランニングによるハイという現象もありますが、そういうことに出会えることは、まずめったにありません。走っても、全くノレない、家について不機嫌になるぐらいのひどいランニングもしばしばです。もはや、サイケデリックはこの2010年において、なんの変哲もない意識の変容を表した、凡庸な言葉に成り下がっていることは事実です。現代は音楽の興味もない普通の人が、元はLSDから産み出されたアートを何の不思議もなく受け入れてしまっている時代です。ならば、俺のようなフリークも、何でもありにしてしまえばいいんじゃないか、そう思ったのが今回のテーマです。

しかし、せっかく走るのだから、いつも走るルートを違った形で光に満ちた世界に変えたいじゃないですか。ですから、引き続き、このブログではランニングと音楽の組み合わせによる新世界を紹介したいと思います。「新しい発想は、結局組み合わせの問題だ」というじゃないですか。とりあえず、今はそれを愚直に守る時期だと思っております。

dOP @ Sonar 19.6.2010

フランスのハウス寄りのミニマルハウスのユニットdOPのライブ。他にもdOPのライブ音源を聞いたことがありますが、比較的コンパクトに、バラエティの富んだライブを展開していて、聴いていて飽きません。これは良質の音源です。

http://hotfile.com/dl/56710370/28d0ea7/dOP_live__off_sonar_hi_five_mobilee_vs_supplement_facts_19.06.10.mp3.html

ボーカリストが一人付いていて、要所要所で歌を入れてきます。必ずしも、歌が上手いとも、間が良いとも言えない感じですが、まあライブなので仕方が無いかなと。でも、曲はやはり良いです。途中、バルカン寄りの音なども交えていますが、軽くてただフワフワしているだけの乱造されているミニマルハウスよりは深みがあり、でも、ちゃんとハウスの良い面を引き出している。

あまりにも構成がかっちりしすぎているということもなく、また、AmeなんかのInnervision関連のヒット曲に縛られてしまう、という矛盾を抱えることもなく、柔軟に曲を変えてくるので、飽きずに聴けるところがなかなかいいかなと思います。

最後の最後で、ボーカルがBeckの「Loser」って90年代に大流行した曲をへたくそに歌い出したりして、それが、なんか、なんともいえない空気を醸し出しています。まあ、それで大笑いするのもよし、ゲンナリするのもよし。

それにしても、このMP3データはタグが変なことになっているので、ちゃんと編集してから各プレイヤーに突っ込むことをお勧めします。

いましろたかし – 引き潮

本日発売のいましろたかしの新刊、「引き潮」。古巣、コミックビームに戻って、12回に渡って連載されたものですが、もはや、彼の近年のイメージ「枯れ」を通り越して、どうにもならない現実に対する諦観がピークを迎えた作品と言っても過言ではないと思います。

引き潮 (ビームコミックス)

著者/訳者:いましろたかし

出版社:エンターブレイン( 2010-07-24 )

定価:¥ 798

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 404726671X

ISBN-13 : 9784047266711


コミックビームでの連載で確立された「盆堀さん」を読んで、ここまでオチがなく、どう考えてもアグレッシブな展開もない、ある種のすがすがしさを感じていた自分にとって、この「引き潮」は更に進化しています。一度は、同じところで同じ事をやってもしょうがない(そして、児童向けは金になるから)と、ボンボンで「化け猫あんずちゃん」を連載しても、ボンボンが休刊してしまい、その愛らしい「あんずちゃん」のキャラクターは、確かにいましろの新境地を切り開いたと思っているのですが、結局、古巣に舞い戻ってしまい、さらにダウナーな日々を書いてしまったいましろ先生。

過去に登場した盆堀さん、ダウナー春山、などのキャラクターを敢えて封印し(盆堀さんのみは一話に脇役として登場するが)、完全に一話一話が切り離された形として書かれたマンガです。欲望を抱いても何もできないキャラクターとか、オチがない、という点では「盆堀さん」と共通していますが、どの話を読んでも、もはや、もうその次元さえも投げ捨ててしまったような、どう表現して良いかわからない「投げっぱなし」の話で終わってしまいますこれを娯楽作品として読む、ということが果たして正しいことなのかどうか、ということを読者が自問自答しかねないほどの素晴らしさです。猫が散歩でスケボーに乗るだけで一話完結してしまう、というような、日常の何でもないことを大げさに語ることなく、見た人はそっと心の中にしまってしまうのです。

初期のいましろたかしの、どうにも片付けない若者の発散されないエネルギーが、中年になってもはや発散されるすべすらないということを、自覚したような作風に、俺は心を打たれてしまいます。決して、その事は、作品の中には表現されていません。そのことを拒絶している、と言っても良いでしょう。しかし、あきらめの裏返しとして、やはりどうしようもない鬱屈が「話」と「話」の間に渦巻いている感じがするのです。絵は以前にもまして、白さを増しており、「化け猫あんずちゃん」で取り戻した背景の書き込みなども、すっかりビーム時代に戻ったように「白い絵」になっており、すかすかです。

帯の売り文句に、浅野いにおが「もしみんながいましろさんの漫画を読んで、つまらないと言うならば、もう漫画が滅んでも僕は構わない」という言葉を書いています。浅野いにおは未読で、俺の好みにあった漫画家かどうかもよくわかりません。しかし、俺はこの言葉を「新井英樹」に当てはめて考え、その正反対ものとして「いましろ」に当てはめてみたとしても、やはり、そう思うのです

そう、この本は空気で出来ているのです。紙で出来ているのではないのです。

化け猫あんずちゃん (KCデラックス)

著者/訳者:いましろ たかし

出版社:講談社( 2007-11-16 )

定価:¥ 590

Amazon価格:¥ 590

コミック ( 152 ページ )

ISBN-10 : 4063723887

ISBN-13 : 9784063723885


盆堀さん (BEAM COMIX)

著者/訳者:いましろ たかし

出版社:エンターブレイン( 2007-09-25 )

定価:¥ 998

Amazon価格:¥ 998

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4757737289

ISBN-13 : 9784757737280


山本直樹 – 地球最後の日

「明日また電話するよ」「夕方のおともだち」に続く、作者自選の短編集の完結編。今回の内容は特にエロの濃度が濃くて、生々しい描写が続くものが多い気がします。前2作よりも、叙情性よりも、もっと直情的なリビドーや破壊衝動、暴力性を前面に押し出しています。実験性は少なく、基本的に「脱がさないと商売にならない」というご都合的な路線に沿ったものが多いかも。

世界最後の日々

著者/訳者:山本 直樹

出版社:イースト・プレス( 2010-07-08 )

定価:¥ 1,395

Amazon価格:¥ 1,395

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4781603831

ISBN-13 : 9784781603834


ある日突然、目の前に神が現れ、世界最後が近づいている高校生が、世界を救済するという使命を託されたものの、結局その使命をあっさりと捨て去り、リビドーに沿って、「やりたいようにやる」狂気の道をひた走ってしまう、連作の「地球最後の日」が圧巻でしょう。世界の終わりが近づいているので、ごく簡単に人を殺め、犯し、幻聴にとらわれ、そして、奇妙な宗教団体?の一団のお祭りにたどり着く。。。ラストの描写が、コマ割りも含めて、山本直樹の本領発揮とも言える、諦観に満ちた素晴らしさで、非常に映画的な雰囲気がするのは自分だけでしょうか。

他のマンガはエロですね。ひたすら、ねちっこい変態の世界です。これは説明するのもはばかられるので、あんまり言いません。「ひどいやつらは皆殺し」は連作ではなく、タイトルだけ同じで全然別の内容ですが、マンガ・エロティクスFに収録されていたものだけあって、ストレートにメチャクチャにしています。叙情性や、(命の重みも含めた)その表現の軽さ、しなやかな身体のライン、など、なんとなく空しさを感じるものが多かった前2作に比較すると、こっちは単純にやりたい放題、やってみた、という感じです。こういう山本の側面も結構嫌いではありません。

なんとも嬉しいのが、巻末の親娘インタビュー。親娘一緒にインタビューを受けているわけではなく、娘がインタビューを受けた後、それについて、山本が返答をする、という形式ですが、まあ、こういうマンガを書いている人だけに、このような遠回しなやり方の方が、よかったのかもしれません。創作者としてではなく、普段、日常生活をしている父親としての「山本」の姿を知る事ができるのが、面白いところです。でも、その父親の「山本」の肖像が、このようなマンガを書く人間の下地になっているというか、切り離すことの出来ない何かがある、と感じてしまうんです。

女性はできれば、前2作を読んで、鍛えてからこの作品を読むのが良いと思います。「エロいけど、空しい」とか、そういうのをあこがれて読むと、絶望します。男性の場合は好みですね。衝動的で変態的なのを見たければこれを読めばいいし、もっと心に引っかかる何かを求めるなら前2作を読んだ方が良い、としか言えません。しかしまあ、最後の作品でこういう路線をぶつけてくるとは。。いやはや。

Shing02 400 REGGAE MIX BY DJ A-1

Shing02の「400」というアルバムがありますが、それを全てレゲエでマッシュアップした代物が公式サイトから無料でダウンロードできます。オリジナルも素晴らしかったのですが、このマッシュアップも相当な出来映えです。なお、DJ A-1はShing02のライブのDJをしているそうです。

http://www.maryjoy.net/400yomi/reggae.html

Shing02のリリックを壊してしまうということもなく、世界観をちゃんとわかって新しい味わいを作ったこのマッシュアップは、非常に素晴らしいです。レゲエと言っても、ゆるゆるになりすぎることなく、緊張感を保った打ち込みは、やはりこの2010年という時代に合ったアレンジで、まさに「甦」と言える代物。

タイトル曲の「400」では、そういう緊張感が存分に味わえます。Shing02の理想主義者でありながら、現実を踏みしめていく態度が、原曲よりも発揮されていると思えてしまうほど。「夢幻殿」の悪夢を見ているようなリリックに、なんとものどかなトラックをぶつけてくるところも、なんというかミスマッチというよりも、珍味。「旋毛風」の曲のキメがピッタリ。なんとも古風なリリックなのに、「ちゃっ、ちゃっ、ちゃっちゃっちゃっ」のリズムが妙にピッタリとはまってしまい、これも面白い。

「JAL002」の哀愁のある曲も、Shing02の書生ぽくて、若々しいリリックに抜群に相性が良い。続く、「憂国」の泣きのメロディもしっとりと声が染み通ってくるよう。

各曲も曲間を全く空けずに、次から次へとびっくり箱から何か飛び出してくるようにバラエティがあって素晴らしいアルバムだと思います。

gamelan gong kebyar

詳細は良くわからないのですが、ものすごいガムランのアンサンブルです。色々な映像がYouTubeにはありますが、これは純粋にガムランの演奏だけで、しかも、技術力といい、表現力といい、文句の付けようのない素晴らしい演奏です。

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これだけ大人数で、一糸乱れぬ演奏を繰り広げるのは、ものすごい。テンポチェンジや微妙な間など、完全に身体の中に染みこんでいるからできるんでしょうね。曲も、緩やかな部分から、激しい部分まで、展開が素晴らしく、聴いているだけで不思議な気分に入り込んでしまうこと請け合いです。

年末はバリに行く予定なので、こういうの見ちゃうと楽しみでしようがありません!!!

Jim Jarmusch – Ghost Dog: The Way of the Samurai (1999)

巨漢の黒人の殺し屋は、「葉隠」を信条とし、鳩を伝達方法に使う、かなり時代錯誤なキャラクター。おいぼれだらけの稼ぎの少ないイタリアン・マフィアに仕事を頼まれていたが、ちょっとした手違いとマフィアの掟によって、やがて、この両者は対決に向かっていく。俺はこの映画を何回見たかわかりませーん。

ゴースト・ドッグ [DVD]

販売元:JVCエンタテインメント( 2000-06-23 )

定価:¥ 4,935 ( 中古価格 ¥ 549 より )

時間:116 分

1 枚組 ( DVD )


「オフビート」という言葉で良く表現されるジムの作品だが、この作品はちょっと異色な感じがします。確かにテンポのキレの良さと、相反するなんとも言えない静かな感覚は確かにジムの刻印がべったりと貼り付けられているのだが、異様な設定だらけでギミックが非常に多い。人によっては、「なんだか良くわからん」「こんなのジムの映画なじゃない!」などと、拒絶してしまう方もいるかも知れませんが、俺はこの作品を断固支持しています。ウータンとかRZAが登場するシーンとか、これ挿入する必要あるの?とか思ってしまうところがありますが、そういうとっちらかったところも含めて、好きになってきました。

殺し屋を演じるのがForest Whitakerということで、あの体型でこんなに動けるの?と思ってしまうのですが、なめらかで動作に無駄がありません。ただ、銃をホルスターにしまうときには、刀をさやに納めるように動くのです。このあたりの芸の細かさは、見ているとニヤリとしてしまいます。常に自分の信条を旨とし、ストイックさを貫き通す冷静なキャラクターが、なんとも静けさを映画にもたらしているのです。殺し方のスマートさは、説明してしまうと映画を見る意味が無くなってしまうので、是非見てみて下さい。鈴木清順へのオマージュが、、。

英語を喋ることの出来ないアイスクリーム屋との交流や、「羅生門」の本を巡るストーリーもなかなか面白いです。ラストに来て、ああ、と溜息をついてしまうこと請け合いです。また、アイスクリーム屋が流している音楽がヘロヘロで何回聴いても、身体が溶けてしまいそうになります。

音楽を担当しているRZAも、あまり主張しないサントラらしい曲調で、映画の雰囲気を壊していないと思います。ただ、ジムのファンってロックが好きな人が多そうだから、Hip Hopに対して普段どのようなアティチュードをとっているかによっても、映画の印象自体ががらりと変わってしまう可能性はあるかもしれません。

どうでもいい話ですが、回想シーンでForest Whitakerが着ていた「全て熟知」と書いてあるTシャツが欲しくてたまりません。あれってどこかで買うことできないんでしょうかね。でも、それぐらい好きな映画なのです。

1982年に作成されたインドのアシッドハウス

シカゴのPhutureのAcid Trackよりも、5年の歳月を先駆けて作成されていたという、インド産アシッドハウス。

これが1982年インド産のアシッドテクノだ! / Ten Ragas To A Disco Beat – Charanjit Singh : matsu & take

なんと、機材にはTR-909とTB-303が使用されており、過剰なビキビキとした音色こそないものの、これは確かにインド風味のアシッドハウス。ポルタメントを使用したなめらかなベースラインは、聴いているだけで手をウネウネと動かしたくなる、相当なモノ。上物もちゃんとシンセサイザーで幽玄さを醸し出しております。ドラムの音色がちょっと控えめなアシッド加減は、2010年という今の時代にもフィットするような感じで、良くこのような音源を掘り起こしたものだと、感心するばかりです。

ビートの組み方なんかはディスコというよりは、まさに直線的なハウスでありまして、と同時期にこのような感覚の音楽が偶然作られてしまった、という事実には驚愕せざるを得ません。

CDでの再発の他、iTunes Storeでも発売が開始されており、ヴァイナルも存在するらしいですよ。

ともかく、リンク先のYouTubeの動画を見て下さい!!!

Running Music Box Vol.4 – Ear is Broken

今回は、ハードコア・パンクと、その影響を受けたBoredoms関連の音源を紹介したいと思います。

Boredoms – Super Root 3 (Hard Trance Away (Karaoke Of Cosmos))

1曲33分。山塚アイの「ワンツー」の叫び声から、ひたすら8小節のループを持続するだけ。コードチェンジが5分ほどの間隔で行われる以外は、ただひたすら速いビートで強烈な疾走をするだけという、ハードコア・パンク・ミニマル。ミニマルといえども、パンクらしい荒々しい演奏に、ギターのフレーズの微妙なゆらぎがあって、人力でこれをやることの意義って非常に大きいのではないか、と感じます。

Super Roots 3 / Boredoms / CD ( Music )

Vice Records( 2007-01-23 )

定価:¥ 1,084 ( 中古価格 ¥ 2,972 より )


前回の記事ではE2-E4をとりあげ、ミニマルで走る難しさと格闘していましたが、この音源に関してはそういう心配は無用です。ヘビーなギター、シャンシャンと鳴り続けるシンバル、コレ聴けばいやでもアップテンポで走らざるを得ない。軽く流すつもりでいても、自然とスピードが上がってしまうので、ゆったりとジョギングするには不向き。ラストの山塚の叫び声から静寂がもたさられるフィナーレまで、なんとかこのテンションを保とうと必死になります。コードチェンジしたときの快感も走っているときには、実に良いタイミングでもたらされます。音程の高いところから、また、ドスの効いた低音に落とすところにはカタルシスすら感じます。

まさに、ランニングはトランスであるということを証明できる一枚でしょう。

Discharge – Why

こちらは正統派のハードコア・パンク。不朽の名作と言われていますが、そこら辺のことはわかりません。ほとんどの曲が1曲2分足らずで終わります。重たく、暗いフレーズに、ボーカルの叫び。でも、ギターの音を聴くとやっぱりパンクだなって思う。

Why (Reis) (Dig) / Discharge / CD ( Music )

Captain Oi!( 2007-04-24 )

定価:¥ 1,989 ( 中古価格 ¥ 1,273 より )


本編の薄汚い録音が却って、生々しいエネルギーを感じさせる。若干突っ込んだギターと、スッタンスッタンと高速なビートを叩いているのにもったりしている、というバンドのグルーヴが、混沌とした塊になって頭に突っ込んでくる。やけくそになって走りたくなるので、これもゆっくり走りたいという時には向きません。走っている途中に川があったりすると、ダイブしたくなる、そういう音楽です

はっきり言って、どの曲も同じです。金太郎飴です。だから、タイトル曲のWhyでも聴きやがれ!!!!一緒に「わーい、わーい、わいわいわーい」と叫んで走ると楽しいです。

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後半のボーナストラック部分はオリジナルの部分と異なり、音質が良くなった分、どうも分離が良く、ガッツが入らないので、ちょっと入り込みにくい。というのが、個人的な感想です。曲は相変わらずといった感じですので、決して出来が悪いわけではないんですけれど。なんなんだろうなあ。

– The Crew

こちらはハードコア・パンクだけれども、陽性な明るい響きを持っています。重さはないですが、疾走感が溢れる感じ。先ほどのDischageと比べると、曲も結構バラエティがあるし、歌もちゃんとキャッチーなフレーズがあって、爽やかさすら感じてしまう。

the crew / / CD ( Music )

Better Youth Org.( 1994-09-27 )

定価:¥ 1,265 ( 中古価格 ¥ 1,000 より )


普通にパンクを聴きながら走る、という行為を考えたときに、純粋に楽しいのはこういう音楽ではないか、と思うわけです。Dischageがイルで陰鬱な空気で頭を満たして、負のエネルギーを借りて身体を動かすのに対して、こちらは頭カラッポにして、軽快にランニングできる。でも、やっぱり、ゆったり走るには不向きかな。

個人的に、アルバム中一番大好きな流れの「You Lose」~「What If There’s A War In America」の動画があるので、参考にして下さい。

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UFO OR DIE - CASSETTETAPE SUPERSTAR 

冒頭でBoredomsを紹介したので、派生バンドを紹介。山塚アイがギター、ボーカル、ヨシミがドラム。ハードコアではありますが、アルバム全体通して聴くと、どちらかというと色が強い。90年代の輸入盤店に行くと、「Punk/」みたいなコーナーがあって、そこにこういう良くわからん、騒々しい音楽が置いてあったりしたものです。

CASSETTETAPE SUPERSTAR / UFO OR DIE / CD ( Music )

DAIKI( 1995-01-01 )

定価:¥ 2,548 ( 中古価格 ¥ 2,200 より )


はっきり言って、アルバムとしてはランニングに向きません。というのも、パンク、というよりは、やはりジャンクであり、ノイズであるので、テンポが掴みづらいのです。後半もちょっとかったるいというかメチャクチャになってきてしまうので。。

しかし、このアルバムの「Dog Wave」から「GHETTO DNA (MOTORHEAD MIX)」の流れはあまりにもアドレナリンを放出してしまうので、ここ一番!という時に聴くと、非常に気合いが入ります。

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Dog Waveの山塚の叫びから一気に疾走するビートになだれ込み、掛け合いの部分のヘビーさが素晴らしい。これも、ランニング中に川があるとダイブしたくなるタイプの曲ですね。一転、5拍子のスローなキメの部分なんかは走りながらヘッドバンギングしてしまいます。アルバム中、結構まともに楽曲になっているんで、聴きやすいです。次のGHETTO DNAの畳みかけるようなグチャグチャ演奏も、頭で理解できないんだけれど、走っちゃう。

そういえば、学生時代、「Dog Wave」はコピーしたなあ。あのバンド楽しかったなあ。ひねくれたパンクばっかりやってて。

最後に

今回は、ハードコア・パンクというテーマで色々な感覚のモノを紹介してみました。どれも、風景を楽しみながら走るとか、そういう余裕は感じることが出来ないので、大音量で音楽に没頭してしまうことをお勧めいたします。まあ、真っ当でない音楽を聴きながら走るのもなかなか楽しいものですよ。

パンク関連はひねくれたものがまだストックがあるのですが、次回は何をテーマにして書こうかなあ。

MF Doomed – Mixed by Pipomixes

MF Doomのラップが乗っている曲だけで作られた26分ほどのミックス。Madlibとの共同プロジェクトMadvillanの曲も収録されています。 

http://pipomixes.blogspot.com/2009/08/mf-doomed-mixed-by-pipomixes.html

ただ、単純にMF Doomネタだけでサクッと作りましたっていう感じがしなくて、トラックもちゃんと良いものをセレクトしているし、構成も良いんだよなあ。最初から最後まで、あのしわがれた、煙たさに満ち、一歩一歩淡々と踏みしめるようなラップが、聴ける幸せ、というのも良いものです。

Madvillainy / Array / CD ( Music )

Stones Throw( 2004-03-23 )

定価:¥ 1,446 ( 中古価格 ¥ 1,200 より )


TAICOCLUB’10 今年も行ってまいりました

というわけで、今年も行ってまいりました!!!!

COS君のテントの横にテントを立てさせてもらいまして、さらにCOS君たちの椅子に座って、ゆったりとした時を過ごしました。睡眠時、活動時以外は入り浸りで、コーヒーウォッカ他、色々とごちそうになりまして、クルーの皆様に感謝しております。テーブルを囲んでの、とりとめのない会話、とにかく笑い転げていたことを思い出します。

電車からテントサイトなど

今年もテントを抱えて電車で藪原駅まで向かったのですが、なんとか座れて良かった。シャトルバスも十分に用意がされており、今年は待ち時間が非常に短かったのが良かったです。

テントサイトが大きくなった上、ちゃんと区画整理がされているため、例年に比べると混雑することもなかったです。場所取りをCOS君にお願いしたのも大きいのですが。夜にへべれけになっても、ちゃんとテントに帰れるっていうのは嬉しいですね。

トイレの数が例年と比べて変わっていなかったので、今年は混雑するのでは?という予想をしていましたが、トータルのお客さんの数はさほど昨年と変わっていなかったように感じます。待ちもほとんどなし。

フードは多少混み合いましたが、時間帯によりけりっていうところですかね。ドリンクは朝まで切れることもなく、ほとんど並ぶことなくすぐに買うことが出来ました。

環境面では、昨年ぐらいのレベルをちゃんと維持していて、非常に好感が持てました。

MOODMAN、クボタタケシ

例年、一息ついてから、ステージを一周するのが習慣になっているので、今年も散策をしました。MOODMANの選曲は言わずもがな。初っぱなプレイにも関わらず、ちゃんと渋く、かつ、心地よく、身体を揺らすもよし、テントサイトで聴いているのも風情があって良し。ということで、今年も良かったです。毎年、安定していますね。

山道を登って、野外音楽堂にたどり着くころにはクボタタケシがプレイ。4,5曲聴いたところぐらいのテンションは好きだったのですが、その後の流れがいまひとつだったので、テントに戻りました。

Dosh

テントで横になっていたら、終わり15分ぐらいで終盤でした。まともに見ることが出来ませんでした。でも、暖かみのあるサウンドで良かったですよ。Doshの人に偶然、火を持っていないか?と言われてライターを貸しただけに余計に惜しい。

Mice Parade

俺が一番楽しみにしていたのが、このライブ。でも、ちょっと遅刻して1曲目の途中で野外音楽堂入り。ボーカルが入って以降の曲がほとんどで、初期のインストミニマルの長尺の曲はやらなかったですね。まあ、1時間という枠だし。でも、さすがMice Parade。

ツインドラムもあり、楽器の持ち替えもあり、鉄琴はもちろん装備、ダブ処理あり、ループ、逆回転、などなど、まさにアルバムでやっているような音響効果もライブであってもちゃんと欠かさずやっていました。みたいに即興をガンガンやるタイプのバンドではないので、ライブならではという緊張感を楽しむ趣とは少々異なりましたが、それでもライブで見れて感動しました。

アダム・ピアースの歌声が良いんですよね。朴訥としていて。しみじみとミニマルな演奏の中に溶け込んでいて。Bem-Vinda Vontadeが結構ロックしながらもミニマルなアルバムで愛聴していたので、そのアルバムの曲を聴くとなんか盛り上がりました。ギター2本の16分のミニマルなアンサンブルの部分は溜息が出るどころか、つい、歓声が出てしまいました。

つーわけで、ナンバーワンアクトでした。

Chez Damier

ほとんど見てませんが、しっかりシカゴ。やっぱりシカゴ。Mice Parade目当ての人はやはり、Autechreを見に行く人が多く、フロアが空いてしまいましたが、初めの方だけ堪能しました。

Autechre

真っ暗闇の中でのライブ。店の照明すら全て落とさせる、ということで、アーティストの要請もなかなかに徹底しておりましたね。しかし、どうも、こういうエレクトロニカってなじめないんですよね。というわけで、ほとんど聴いていません。

そこで、野外音楽堂に戻り、日本のインストバンド。何の予備知識もない状態で見たにも関わらず、結局全部見てしまいました。

一見タイコで朝方ということで、それなりに地味な感じかなって思っていましたが、はっきり言ってこれはゼロ年代のプログレですよ。ミニマルがどうとか、音響がどうとか、そういうのは全くなし。緻密な演奏で押さえるべきところで押さえ、爆発するところで爆発させる。複雑なアンサンブルで聴かせるタイプのバンドだと思います。妻はしきりに「ダサイダサイ」と連呼していましたが、俺は、もうこの頃にはすっかり酔いが回ってしまい、とにかくステージの真ん前で固まるしかありませんでした。このプログレ魂がわからないのか!そうでないのか!そこで好みが分かれると思います。ダサくても、このアンサンブルがあればいいんだ!というのが俺の印象でした。そういう意味でもMice Paradeとは全く違う切り口で、楽しみました。

7拍子の曲を3曲立て続けにやったときにはさすがに笑いが止まりませんでした。でも、演奏の内容は全く覚えていません!!!!!!!!!!!とにかく、俺は見続けなければならなかった。集中して固まっていた。それだけです。

Fumiya Tanaka

今年は野外音楽堂のプレイと言うことで全力ダンスを期待していたにも関わらず、全く期待はずれ。ポコポコした適当にハウシーなミニマルで、どこにもぶっとばされることもなく、早々にテントに戻りました。

Kettel

正直、この頃は体力が追いついていなくて、そこにきて、いかにもラップトップのエレクトロニカって感じなので、眠りはしなかったけれど、芝生でごろごろしていました。コンピュータ1台でやるアーティストにありがちな、音響として平板な印象が否めなくて、世界に入り込むことができず。曲も初期のものはほとんどやっていなくて、どうも、盛り上げ方(地味な曲なんだけど)もちょっとフォーカスが自分の好みと合っていない。そんな、せつない気分を味わいながら、全編聴きましたけどね。

Nick The Record

今年は月曜日に休みが取れなかったので、早い時間に帰ることにしていたのと、もはや、体力が限界に来ていたということで、1時間弱座りながら堪能するという結果になりました。

どんな曲を掛けてもNick。どこを取り出してもNick。もう、何がなにやら覚えてすらいませんが、ああ、Nickだなあ。タイコのフィナーレだなあ、ってことを噛みしめていると、なんで楽しい時間が経つのって、こんなにすばやいんだろう、って、悲しくはないけれど、ぼそぼそと何かつぶやいていたような。

終わりに

というわけで、今年はあまりガツガツ音楽に食らいつくっていうムードではなく、なんとなく空気を味わうのが中心って感じでした。アーチストの人選っていうのもあるけれども、自分のコンディションがそうさせた、っていうのが大きいと思います。正直、一回ぐらい思い切りダンスをしたかったぜ!っていう名残もありますが、やはりタイコはタイコ。

こんな年もあっていいんじゃないかな。

Running Music Box Vol.3 – E2-E4 or Not

さて、今回で3回目となりましたRunning Music Boxはただ一つの曲だけをとりあげます。

もはや、古典。80年代後期「Sueno Latino」というバレアリックハウスでサンプリングされ、90年代に入り、テクノブームが来ると一つのテクノの源流と解され、折しも、ジャーマンロックの再評価の熱を受けたあの曲。クラウスシュルツがリリースを勧めなかったら、世に出ることすら無かったかも知れない、82年のリリースのあの曲です。

E2-E4 / Manuel Gottsching / CD ( Music )

( 2010-05-04 )

定価:¥ 2,442


概説

Manuel Gottsching – 。60分で1曲。アナログでは当然両面に2分割されざるを得なかったが、CDとなった今ではつながりをもって、通して聴くことが出来る。リズムボックスのシンプルな打ち込みに、快楽的なシンセがひたすらミニマルなフレーズを重ね、フィルターを開閉し、長きに渡って音をすべりこませ、長きに渡って音を消し、26分辺りでようやく、ゲッチング先生のギターがゆったりとたなびきはじめる。

サンタナの影響もあるのか、チョーキングするときには一切ビブラートを掛けたりしない。一音、一音、とにかくスマートに聴かせる。ブルージーな音階を使ってる癖に、まったく泥臭さを感じさせないどころか、シーケンスの罠にすっきりとはまってしまうフレージング。時折、ピッキングのミスもあるが、それすら生々しい。後半のコードのカッティングの盛り上がり。そう、これはまさにリアルタイム、アドリブの産物であるということを忘れてはならない。

というわけで、BGMとして部屋で読書しながらくつろいで聴くには良いかも知れないが、あるいは、カーステレオ、料理しているとき、セックスの時でも良い。多分、何かしながら、ごきげんになるための音楽である。これはスピーカーの前に正三角形を作ったポジショニングで最初から最後まで聴く類の音楽ではない。いや、それができるほどのクオリティがある、という意見に反対しないが、それが意図された聴き方であるとは正直自分には思えない。

ランニングにて

で、ランニングのBGMである。ランニングしているからには、常にこのミニマルな音楽にコントロールされることになる。テンポから言ってスピードランニングには適さない。やろうと思っても、この音楽の醸し出すリラックスしたムードから逃れることは無理だ。軽く1時間流す。あるいは、LSD(この略語が、Long Slow Distanceであることは強調しておくが)の合間に聴く以外、使い道が限定されてしまっている。ランニング、ジョグをするには、実は結構縛られた音楽であるということを感じた。

2時間を超えるLSDの最後に2回。そして、90分のランニングの初めの曲として、聴いてみた結果として、正直この曲がランニングに適したものであるかどうか、計りかねるものがあった。精神状態、肉体状態に不安を持ち始めると、この曲は真綿の牢獄のように抜け出せない終わりのない時間を感じさせてしまう。しかし、調子が出始めると、シンセサイザーのフィルターの開閉がはっきりと時間の経過を知らせるほど、ある意味トランスの状態にはまり込めるのも事実だ。

個人的には、肉体的に疲労があるときにこの曲を最初から聴くことは勧められない。ゲッチングのギターが入るまでの26分間を耐えるのがとても厳しいからだ。ミニマルで快楽性があるのだが、それに包み込まれ、ある程度支配されてしまうBGMであること、そして、高揚感を得にくいという理由もある。あくまで個人的な見解であるが、あまりにも淡々としすぎている音楽はランニングには適さない。そして、その後、ギターが入ってきても、ダメなときは、やはり、ダメなのだ。

反対に、肉体疲労の少ない序盤に、静止した状態から身体が滑り出すようにランニングを開始するときには、なかなか良い音楽だと感じている。前述の通り、あくまで、「精神、肉体に不安がない状態で」の話である。自分の場合は5分ほど、その「罠」に入り込んでしまったが、そうした不安が消えてしまうと、「ただ走ること」それだけが音楽と同一になるような感覚に陥った。もはや、フォームや着地の安定感にとらわれることはどうでもよくなってきた。ということは、反面、そうした慎重なランニングには必ずしも適していないということになる。

結論

このような見解を述べてみたのを読んで、がランニングに向かない、という感想を持ってしまうかもしれないが、これは必ずしもそういうことではない。この曲は緩やかな癖に、ランニングをするにはちょっとナイーブなのだ。ミニマルだし、淡々と走るにはいいかも、というには、意外と強い束縛を持つ音楽である、ということを個人的には強調しておきたい。

最後に、自分の音楽性がドラマチックな、あるいは、エモーショナルなものに偏っているということを一言付け加えておきたい。