90年代初期より、Basic Channelというレーベルで数々のダブミニマルの名曲を生み出したMoritz von Oswaldが、よりレゲエに接近した音作りを目指したユニットRhythm & Soundのアルバム。このアルバムはレゲエの世界でいうところの「ワンウェイ」という構成になっています。同一のトラックを使って、様々なシンガーがそれぞれの歌詞とそれぞれのメロディを歌い上げた曲を集めたものです。歌声が変わるだけでここまで変わるのか!と驚かずにはいられません。
同一のトラックといっても曲ごとに微妙に音色やエフェクト、それに抜き差しを変えているのですが、その変え方というのが本当に「すこしだけ」なのです。良く聴けばそれなりに変えているんだけれど、余計なものが一切感じられないのです。少しずつ違いを出しながらも、聴いたときの感触を見事に揃えているのは、緻密な引き算の美学によるものでしょう。
また、この曲のトラックは基本的に非常にミニマルなリズム、ベースラインから成り立っているのですが、素晴らしいループなので、聞き飽きるということがありません。Rhythm & Soundらしい、ちょっとひんやりとした感じの音質は、本作でも何ら変わるところがありません。ひんやりと言っても、冷たいシャープな感じはせず、どこかふくよかなバランスが保たれており、同時に心をゆっくりと温めてくれるところが不思議なところですね。相反する要素が成り立っています。
冒頭の”See Mi Yah w/ Willi Williams”ですが、ゆったりと心にしみいるボーカルがニクイ出来です。淡々とした調子ですが、それだけに一語一語のフレーズが頭にすっと入ってきます。5曲目の”Lightning Storm w/ Rod Of Iron”も好きな曲ですね。比較的ミニマルな曲が大半のこのアルバムの中で、割合はっきりとした曲の展開が作られています。バックビートのスネアがはっきりとした感じで聞こえてきますね。語りの部分と歌の部分のトラックの抜き差しがすばらしいです。哀愁たっぷりの歌声に後半、コーラスが被せられるところが鳥肌ものです。エコーもばっちりと決まってますね!
Rhythm & Soundでずっとパートナーとして活躍しているTikimanこと”Free For All w/ Paul St. Hilaire”が納得の出来。他のシンガーに比べるとそんなに歌が上手いわけじゃないし、前のアルバムに比べると歌い方が結構地味な感じがするけれど、やはりRhythm & Soundにはこの声が合っているんだなあ。ギターの音がかなり哀愁を醸しだしていて、隙間の多いボーカルラインともかなりマッチしています。
ダブ~テクノのラインをつなぐ、重要なアルバムだと思います。ダブ~テクノというと、一般的にテクノ寄りになっている曲が多いと思いますが、このアルバムは土臭くてアルバムのコンセプトからするとテクノの範疇からはみ出てレゲエよりになっている感じです。
かすみが掛かったような煙たい音が好きな人には、良い一日の最後を締めくくるアルバムになるでしょう。
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